こんにちは。腰痛治療家で理学療法士の平林です。
先に結論からお伝えすると、「ぎっくり腰」とは、急に生じた腰痛(急性腰痛)の通称で、医療機関では原因が特定できない場合に「急性腰痛症」という診断名が使われることがあります。つまり両者は、別の病気ではなく「呼び方の違い」と考えていただいて大きな問題はありません。この記事では、急性腰痛とぎっくり腰の言葉の整理、一般的な経過と期間、対処の基本、そして受診すべき危険なサインまでを順番に解説します。
急性腰痛とぎっくり腰の違い|正式名称は「急性腰痛症」
まずは言葉の整理からです。
急性腰痛(症)とは
急性腰痛とは、文字通り「急に生じた腰痛」を指す言葉です。
「腰痛」はそもそも症状の名称であって、病名ではありません。医療機関で診察を受けても痛みの原因がはっきり特定できない場合に、「症」を付けて「急性腰痛症」という診断名が使われることがあります。
原因が特定しきれない腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれ、腰痛の多くを占めるとされています。急な腰痛でも、診察や画像検査で明確な原因が見つからないケースは珍しくなく、その場合に急性腰痛症(または腰痛症)という名前が使われるわけです。
ぎっくり腰とは急性腰痛の「通称」
一方の「ぎっくり腰」は、正式な診断名ではなく、急に起こった強い腰痛を指す日常的な呼び名(通称)です。ドイツでは「魔女の一撃」と呼ばれるそうで、それくらい急激で強い痛み、というイメージが伝わる表現ですね。
厚生労働省のパンフレットなどでも「ぎっくり腰(病名は急性腰痛症など)」といった形で紹介されており、一般には「ぎっくり腰=急性腰痛症の通称」と理解されています。
厳密には少しだけ違いがある
ひとつ補足すると、「ぎっくり腰」という言葉は日常語なので、使われ方に幅があります。
たとえば「ぎっくり腰だと思って受診したら、腰椎椎間板ヘルニアと診断された」というケースがあります。この場合、原因が特定できているので診断名はヘルニアとなり、「急性腰痛症」とは呼ばれません。
つまり、日常語としての「ぎっくり腰」には、原因が特定できるものも特定できないものも含まれるのに対し、「急性腰痛症」は原因が特定できない場合に使われる診断名、という関係です。ここが、あえて言えば両者の「違い」にあたります。
とはいえ、急な腰痛の多くは原因が特定されないため、実際にはほぼ同じものとして扱われている、と理解しておけば十分です。
急性腰痛(ぎっくり腰)の一般的な期間と経過
急な腰痛はとてもつらいものですが、経過は比較的良好な場合が多いとされています。
多くの場合、数日〜数週間のうちに痛みが軽快していくとされています。発症直後がもっとも痛みが強く、時間の経過とともに少しずつ楽になっていくのが典型的な流れです。
ただし、経過には個人差があります。たとえば腰椎椎間板ヘルニアなどが背景にある場合は、腰痛に加えて足のしびれや痛み(坐骨神経痛など)を伴うことがあり、回復に時間がかかったり、専門的な治療が必要になったりする場合もあります。
また、一度良くなっても、同じ生活習慣のままだと再発することがあります。腰痛を繰り返しやすい背景については、腰痛を繰り返す原因の記事で詳しく解説しています。
急性腰痛(ぎっくり腰)の対処法の基本
対処の基本は、次の2段階で考えるとわかりやすいです。
まずは無理をしない
痛みが強い発症直後は、無理に動いたり、痛みを我慢してストレッチや運動をしたりする必要はありません。楽な姿勢で過ごし、痛みが落ち着くのを待ちましょう。
発症直後の具体的な過ごし方や姿勢のとり方については、ぎっくり腰の応急処置の記事で手順を詳しく紹介していますので、そちらを参考にしてください。
落ち着いたら少しずつ動き始める
痛みが少し落ち着いてきたら、必要以上に安静を続けず、できる範囲で日常の動作を再開していくことがすすめられています。長く寝込み続けるよりも、無理のない範囲で体を動かしたほうが、回復や再発予防の面で良い影響が期待できるとされています。
「痛みが完全にゼロになるまで動かない」のではなく、「痛みと相談しながら、できることから少しずつ」が基本の考え方です。
ちなみに、ぎっくり腰は重い物を持ち上げたときだけでなく、くしゃみのような日常のささいな動作でも起こることがあります。詳しくはぎっくり腰がくしゃみで起こる理由をご覧ください。
こんな症状があれば医療機関へ|受診の目安
急性腰痛の多くは経過が良好とされていますが、なかには早めの受診が必要なケースもあります。次のような症状がある場合は、様子を見ずに整形外科などの医療機関を受診してください。
- 足のしびれや脱力が強い、または徐々に悪化している
- 尿が出にくい、漏れる、便が出にくいなど、排尿・排便の異常がある
- 発熱を伴っている
- 安静にしていても痛い、夜間に痛みで目が覚める
- 転倒・転落など、はっきりしたケガ(外傷)のあとから痛み出した
これらは、単なる急性腰痛症ではない病気が隠れている可能性を示すサインです。当てはまるものがあれば、自己判断で経過を見ずに、早めに医師の診察を受けましょう。
よくある質問
Q1. 急性腰痛とぎっくり腰は結局同じものですか?
ほぼ同じものと考えて差し支えありません。「ぎっくり腰」は急に起きた腰痛の通称で、医療機関で原因が特定できない場合には「急性腰痛症」という診断名が使われることがあります。ただし、検査で原因が特定された場合は、ヘルニアなどその病気の名前で診断されます。
Q2. ぎっくり腰はどのくらいの期間で良くなりますか?
多くの場合、数日〜数週間で痛みが軽快していくとされています。ただし経過には個人差があり、足のしびれを伴う場合や、痛みが長引く場合は、別の原因が隠れていることもあるため受診をおすすめします。
Q3. 痛いときは安静にしていたほうがいいですか?
痛みが強い間は無理をせず楽な姿勢で過ごし、痛みが落ち着いてきたら、必要以上に安静を続けずに少しずつ動き始めることがすすめられています。長期間の安静はかえって回復を遅らせる可能性が指摘されています。
まとめ
今回は、急性腰痛とぎっくり腰の違いについて解説しました。
- ぎっくり腰は、急に起きた腰痛(急性腰痛)の通称。原因が特定できない場合の診断名が「急性腰痛症」
- 日常語の「ぎっくり腰」には、ヘルニアなど原因が特定できるものが含まれることもある
- 多くは数日〜数週間で軽快するとされ、無理をしない→落ち着いたら少しずつ動くのが対処の基本
- 足のしびれ・脱力の進行、排尿・排便の異常、発熱、安静時・夜間の痛み、外傷後の痛みは受診のサイン
言葉の違いにとらわれすぎる必要はありませんが、「危険なサインがないかを確認し、なければ焦らず経過を見ながら少しずつ動く」という流れを知っておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。
今回の内容があなたのお役に立てばうれしく思います。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療の代わりになるものではありません。症状が続く場合や強い痛み・しびれがある場合は、整形外科など医療機関を受診してください。


