こんにちわ。
腰痛治療家で理学療法士の平林です。
脊柱管狭窄症は感覚障害を引き起こす可能性があります。
感覚障害とはしびれ、だるさ、にぶい、何とも表現しづらい症状・・・・
などが感覚障害と言えます。
腰から足にかけて上記のような感覚異常を感じる事があります。
今回は、こういった感覚障害を治すために必要な要素を紹介したいと思います。
この記事を読めば、
◎感覚障害を治す為に必要な思考について、知れて症状軽減につなげられる可能性が高くなる。
といったメリットがあると思います。
1 脊柱管狭窄症の感覚障害を治す為には、思考を磨こう
感覚障害と向き合っていくためには、それに対する知識を増やしてより深く理解しておくことが重要です。
ここではその思考を磨くための考え方をお伝えします。
しびれは治療をしてみないと治るかわからないという事を知ろう
「しびれは、一生治らないものだろう」「しびれは、時間をかければ治るものだ」…
と考えてしまう人が多いように感じますが、これらの答えはどちらも正解ではありません。
しびれは、治るか治らないか治療をしてみないとわかりません。
すでにしびれを感じている場合、お医者さんからは「治療をしてもしびれは残る可能性がある」と説明を受けることが多いのではないでしょうか。
これは、お医者さんも完全に治りますよ!とは言えなくて、治療をしてみないとわからないからです。
もちろん、お医者さんの経験上、「これなら治る」とか「これはしびれが残る」という判断がつく場合もあると思いますが、脊柱管狭窄症のしびれにおいては治るかどうかについては、治療してみないとわからないと考えておいた方が良いです。
痛みは軽減・改善する事が多い事を理解しよう
脊柱管狭窄症においてもそうなのですが、痛みの症状としびれの症状が、同じタイミングで起きることがあります。
だから、痛みもしびれも同じ理由で生じているのだろう、痛みとしびれは同時に治るのだろうと想像してしまうかもしれませんが、実際にはそうではありません。
痛みとしびれは別物です。
始まるタイミングが同じでも、治り方まで同じではありません。
多くの場合、強い痛みは比較的早期におさまって改善する可能性は(しびれより)高いです。
これは傾向の話で、逆に痛みより先にしびれが治まる可能性もあります。
痛みは慢性疼痛となる可能性があるので、必ずしも痛みだけが確実に早く良くなるとは言えません。
この点を理解していただけたら嬉しいなと思います。
治るであろう、治療を続けて諦めない気持ちを持つ。
しびれなどの感覚障害は通常回復に長期を要します。
正座の後の足のしびれは数分もあれば回復しますが、脊柱管狭窄症などの病気で長期間圧迫を受けた神経のダメージは大きく、正座と同じように簡単に回復しません。
何カ月もしびれを感じていれば、もうこれは治らないのかも?と感じてしまうのは当然でしょう。
しかし、数か月であきらめないでください。
ダメージを受けた神経の回復には数か月、場合によっては年単位を要します。
何年も時間をかければ、必ず治るということは言えませんが、それでも、年単位で回復される方がいらっしゃるのも事実です。
障害に意識を向けすぎてはいけないのですが、早期に治療をあきらめない姿勢は大切です。
2 なんで、脊柱管狭窄症で感覚の障害が起きるのか?
脊柱の中には脊髄が通っています。
脊柱管狭窄症は脊髄の通り道である脊柱管が狭くなって、神経を圧迫することで症状が起こります。
狭窄の状態によって圧迫される神経の部位は異なるため、症状の種類にも違いを生じます。
大きく分けると、神経根部が圧迫される場合と脊髄そのものが圧迫される場合とがあります。
脊髄神経には運動神経と感覚神経が含まれます。
したがって、神経が圧迫を受けると感覚障害を起こすことがあるのです。
もう少し詳しくお話すると、神経根部は前根、後根の2つに分かれていて感覚神経は後根を通ります。
後根から入った感覚の神経は脳へと向かいますが、感覚の種類(触・圧覚、温度・痛覚、深部感覚など)によって、脊髄の中での通り道が違います(前脊髄視床路、外側脊髄視床路、脊髄小脳路など)。
これらは、脊髄の中での物理的な位置も異なりますので神経圧迫の状態によって症状の出方も異なってきます。
ちなみに、脳から出た運動神経は皮質脊髄路などを経て前根から出ていきます。
したがって、この部位に圧迫などを生じれば運動麻痺を起こすことがあるのです。
3 手術をすれば、感覚障害も良くなるのか?
ここでは、手術による感覚障害について述べていきたいと思います。
手術で感覚障害が良くなる人と良くならない人について話していきます。
どちらも正解なので、参考にしてほしいと思います。
その① 良くなる人もいる
感覚障害は、神経に対する物理的な圧迫が主な原因です。
したがって、治すためにはこの圧迫を取り除いてあげる必要があります。
神経は圧迫を受けても、弱い力・短時間であれば、回復する可能性が高まります。
理屈では、手術が早ければ早いほど結果は良いということが言えるでしょう。
神経の状態が良好で、手術によるリスクも最小で行われれば感覚障害が改善する可能性は十分にあると考えられます。
その② 良くならない人もいる。
神経への圧迫が強い場合や長期に及ぶ場合は、神経へのダメージが起きます。
ダメージが限界を超えれば、神経の回復は望めません。
組織の癒着が強い場合などでは、手術による侵襲のリスクもあります。
結果的に、手術をしてもしびれが残ったという状態になることもあるわけです。
しかし、これは手術の失敗ではありませんし、手術の選択が間違っていたということでもありません。
手術を行ったことでしびれが残ったとしても、それ以上の悪化を防ぐことができる場合が多く、そのような意味で大きな効果があると考えてよいでしょう。
4 神経は少しでも回復していくと言われている。という話
「神経」とまとめて呼んでいますが、手足に伸びていっているのは、神経の「軸索(じくさく)」の部分です。
軸索の部分は細胞によって守られています(シュワン管、膜)。
例えてみれば被覆された電線です。
電線は、途中で完全に切断されれば電流を流すことはできません。
同様に神経もその機能を失ってしまいます(神経断裂、neurotmesis)。
ところが神経が切れる場合、中の軸索だけが切れて外側の被覆(膜またはシュワン管)の部分は残ることもあるわけです(軸索断裂、axsonotmesis)。
軸索は切れてしまうと、遠位(切れたところから先の方)の軸索は崩壊してしまいます(ワーラー変性)。
しかし、神経の通り道が残っているため神経は再生し、目的地へと延びていくのです。
ここで、ポイントとなるのは軸索が切れると切れた先の軸索部分が死んでしまうこと。
また、神経の再生スピードが1日に1㎜程度であることです。
そうです、軸索が切れたところから目的地(例えば腰から足まで)の距離は部位にもよりますが、数10cm以上あります。
例えば仮に腰から足のしびれている部分までの距離を50㎝(500㎜)、神経の再生スピードを1㎜/1日とすると、回復にかかる日数は、理論上500日ということになります。
ゆうに1年間を超えてしまいます。
このように神経の回復には長期を要しますのですぐにあきらめないようにしてください。
このような長期にわたる神経の回復については、医師にも断言できないことが多いので、その点は理解しておく必要があります。
5 まとめ
今回は、脊柱管狭窄症によって生じる感覚障害についてお伝えしました。
感覚障害に向き合うためには、感覚障害に対する正しい知識を持ち、深く理解することが大切です。
感覚障害は、神経へのダメージによって起こりますがそのダメージの程度によって回復具合も異なります。
神経のダメージは、検査では詳細を突き止めることができないため、結果的に治療をしてみないと治るか治らないかわからないという事実があります。
神経の回復には長期を要します。
特に下肢に生じたしびれなどは回復に1年以上を要することもあります。
痛みとしびれが生じていた場合、先に痛みが改善してしびれが残る場合が多いですが、ずっと遅れて、後にしびれも回復することがあります。
強い期待を持ちすぎるのはよくありませんが、改善の希望も持ちながら前向きに進んでいただければと思います。
今回の記事が少しでも参考になればうれしいです。