こんにちは。腰痛治療家で理学療法士の平林です。
「ストレスで腰が痛くなるなんて本当?」と疑問に思っていませんか。結論からお伝えすると、腰痛とストレスには関係があると考えられており、近年の研究では、心理社会的要因(ストレス・不安・気分の落ち込みなど)が慢性腰痛の発症や長期化に関与するとされています。腰痛の原因は、力仕事や長時間のデスクワークといった身体への負担だけではないのです。
この記事では、腰痛とストレスの関係の仕組み、ストレスが関わる腰痛の特徴、そして今日からできる対処法を解説します。マッサージやストレッチだけでは良くならない腰痛に悩んでいる方は、参考にしてみてください。
腰痛とストレスの関係|心理社会的要因が痛みに関与するとされる
腰痛とストレスは無関係に見えますが、研究が進んだ現在では、ストレスが腰痛の一因になり得ることが指摘されています。小さなストレスでも積み重なれば大きな負担となり、脳の働きに影響して、通常なら感じない痛みを感じやすくなったり、腰痛が起こりやすくなったりすると考えられているのです。
私自身、理学療法士として臨床に関わるなかで、身体の状態だけでは説明しにくい腰痛の背景に、仕事や生活上のストレスが重なっているケースは少なくないと感じています。
腰痛のある人はストレス反応が高い傾向にある
腰痛と心理社会的要因の関連を調べた調査では、腰痛のある人はない人に比べて、ストレス反応の割合が高いという結果が示されています(一部抜粋)。
- 疲労感:腰痛あり54.7%/腰痛なし27.7%
- 不安感:腰痛あり32.9%/腰痛なし19.5%
- 抑うつ感:腰痛あり30.9%/腰痛なし15.7%
- イライラ感:腰痛あり32.5%/腰痛なし24.3%
- 身体愁訴:腰痛あり33.4%/腰痛なし8.2%
もちろん「腰痛があるからストレスを感じている」という逆方向の影響や、痛みとストレスがお互いを強め合う悪循環も考えられるため、すべてがストレス由来と断言はできません。それでも、腰痛のある人がより多くのストレスを抱えている傾向は読み取れます。ストレスへの対処が、腰痛の改善につながる可能性があるといえるでしょう。
ストレスの要因は身体・生活・家庭・仕事など幅広い
ひとくちにストレスといっても、要因はさまざまです。
- 身体の不調:腰痛や慢性の頭痛、肩こりなど
- 生活習慣の乱れ:運動不足、肥満、飲酒、喫煙、睡眠不足、自分の時間が持てない
- 家庭環境の問題:離婚、近親者との死別、家族の介護など
- 労働上の問題:長時間労働、夜勤、残業、休日の少なさ、人間関係の悪化
すぐに解決できるものもあれば、簡単には変えられないものもあります。まずは「自分は今、何にストレスを感じているのか」を把握することが第一歩です。
身体的ストレス(物理的な負荷)も腰痛の要因になる
心理面だけでなく、腰への物理的な負荷も当然、腰痛の要因です。労災疾病関連の研究では、仕事内容別の腰痛のなりやすさ(オッズ比)として次の数値が報告されています。
- 力仕事:1.63
- 不自然な姿勢:1.26
- 立ち仕事:1.14
- 車両運転:1.09
- デスクワーク:0.76
数値が大きいほど腰痛になりやすい傾向を示します。力仕事や不自然な姿勢はリスクが高めですが、数値の低いデスクワークでも腰痛になる人はいます。職業別の具体的な対策は、腰痛で仕事がつらいときの対処法の記事で詳しく解説しています。
ストレスが腰痛につながる仕組み|脳の痛み抑制システムが働きにくくなる
ストレスや抑うつ状態が続くと、脳が本来持っている「痛みをおさえる仕組み」が働きにくくなるとされています。
正常な脳では、痛みの刺激が伝わるとドーパミンが放出され、続いてセロトニンやノルアドレナリンが分泌されて、脊髄レベルで痛みが抑制されます(下行性疼痛抑制系と呼ばれます)。ところが、抑うつ状態ではこれらの脳内物質が減る傾向があり、痛みをおさえるブレーキが効きにくくなると考えられているのです。
実際、近年は慢性腰痛の脳の状態とうつ病の状態に共通性があることが分かり、従来うつ病に使われていた薬が慢性腰痛に伴う痛みの治療に用いられることもあります。研究でも、抑うつ感のある人の腰痛は重症化しやすいことが指摘されています。
気分の落ち込みや不眠などの心の不調が長く続いている場合は、腰だけの問題として抱え込まず、心療内科や精神科に相談することも選択肢のひとつです。
不安や恐怖(恐怖回避思考)が腰痛を長引かせることもある
「また痛くなったらどうしよう」という不安や恐怖も、腰痛の慢性化に関わるとされています。これは「恐怖回避思考」と呼ばれる考え方のパターンです。
スポーツで緊張すると本来の力が出せないのと同じように、痛みへの恐怖があると体の動きが硬く、ぎこちなくなります。必要以上に腰をかばう動きが続くと、かえって腰に負担のかかる使い方になり、痛みを繰り返しやすくなると考えられます。
とはいえ、不安や恐怖をすぐに消すのは難しいものです。だからこそ、姿勢のコントロール・筋力と柔軟性づくり・動作の工夫といった「自信の裏付けになる対策」を少しずつ積み重ねることをおすすめします。日ごろの対策が自信につながれば、恐怖や不安は軽くなっていきやすいです。「痛いから動かない」が続いている方は、腰痛は安静と運動どちらがいいのかも参考にしてください。
腰痛とストレスへの対処法|運動・睡眠・楽しみの時間
ストレスの原因は人それぞれのため万能の解決法はありませんが、多くの方に取り入れやすい対処法を紹介します。
適度な運動をする
ウォーキングなどの有酸素運動は、ストレス対処の手段として取り入れやすく、ストレッチでも構いません。運動は腰痛予防の面でもプラスに働くことが期待できます。まずは散歩程度から始めてみましょう。
睡眠を整える
腰痛のある人は睡眠時間が短い傾向があるとされます。眠れない日が続くときは「眠らなければ」と力まず、眠れるときにしっかり寝る、という柔軟さも大切です。寝酒は眠りが浅くなることがあるため、飲み過ぎには注意してください。
好きなことを楽しむ時間を持つ
好きなものを食べる、趣味に没頭するなど、自分がほっとできる時間を意識的に確保しましょう。何事もほどほどが肝心で、「ストレス解消しなければ」と意識しすぎること自体がストレスになっては本末転倒です。人間関係については「10人中2人、気の合う人がいれば十分」くらいに考えて、期待しすぎないことも心を軽くするコツのひとつです。
なお、「腰痛が治らない」と気持ちが沈んでいる方には、心理面から腰痛を考えた腰痛が治らないと諦める前に読んでほしい話もあわせておすすめします。
こんな症状があるときは早めに医療機関へ
次のような症状がある場合は、ストレス対処よりもまず、早めに整形外科などの医療機関を受診してください。
- 足のしびれや脱力が進行している
- 排尿・排便の異常がある
- 発熱を伴う腰痛
- 安静にしていても続く強い痛み、夜間に目が覚めるほどの痛み
- 転倒・事故など外傷のあとから始まった痛み
これらは重大な病気が隠れているサインの可能性があります。
よくある質問
Q1.ストレスだけで腰痛になることはありますか?
「ストレスだけが原因」と断定できるケースは多くありませんが、心理社会的要因が腰痛の発症や慢性化に関与するとされています。身体の要因とストレスが重なって痛みが強まっている場合が多いため、両面からの対処が望ましいです。
Q2.ストレスが関係している腰痛かどうか、見分ける方法はありますか?
自己判断は難しいのが正直なところです。目安として、検査で大きな異常がないのに痛みが長引く、ストレスが強い時期に痛みが悪化しやすい、といった傾向があれば心理面の関与も考えられます。まずは整形外科で身体の状態を確認してもらうことが先決です。
Q3.病院に行くなら何科がいいですか?
まずは整形外科で腰の状態を診てもらいましょう。そのうえで、気分の落ち込みや不眠など心の不調が続いている場合は、心療内科や精神科への相談も選択肢になります。最近は痛みの専門外来(ペインクリニック)で心理面も含めて診てもらえる場合もあります。
まとめ|ストレスを減らす工夫が腰痛改善につながる可能性がある
腰痛は身体への負荷だけでなく、ストレスや不安・抑うつといった心理社会的要因も関与するとされています。ストレスが続くと脳の痛みをおさえる仕組みが働きにくくなり、痛みを感じやすくなったり、慢性化しやすくなったりすると考えられています。
適度な運動・睡眠・楽しみの時間などでストレスとうまく付き合いながら、姿勢や動作の対策も並行して行っていきましょう。心の不調が続く場合は心療内科等への相談も検討してください。この記事があなたの腰痛改善の参考になればうれしいです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療の代わりになるものではありません。症状が続く場合や強い痛み・しびれがある場合は、整形外科など医療機関を受診してください。


