こんにちわ。
腰痛治療家で理学療法士の平林です。
「お灸」は中国で発祥してから2,000年以上も続くと言われる治療法です。
長きにわたり人々に親しまれてきた治療法と言えるでしょう。
さて、このお灸、腰痛の治療に効果はあるのでしょうか。
今回の記事では、このお灸の腰痛に対する効果についてお伝えします。
この記事を最後まで読むメリットは、
○ お灸を行う際のポイント
○ せんねん灸ってなにかわかる
○ せんねん灸の使い方を知れる
といった事です。
是非、最後まで読んで、腰痛治療の参考にしていただければ幸いです。
では、本日も宜しくお願いいたします。
お灸は腰痛に効果あるのか?を考察してみた
お灸を聞いた事はあると思いますが、実際の効果はどうなのでしょうか?
という所で。
それについて、話していきます。
参考として捉えて欲しいと思います。
お灸の効果について
お灸を理解するためには、まず東洋医学について知る必要があります。
東洋医学とは、広義には、東洋諸地域でおこり、発展した医学を総称しています。
現在、日本で常識化している東洋医学の概念は、古代中国でおこり、発展し、日本に伝えられ、日本の風土のなかで発展した医学(漢方医学)の総称である。
古代中国の黄河の流域でおこり、発展したのが鍼灸(しんきゅう)、手技(とくに「あんま」)療法であり、揚子江(ようすこう)流域およびそれ以南の地域でおこり、発展したのが漢方薬療法であるといわれる。
その中で、経絡やツボというのが使用されています。
【経絡とは】
東洋医学の概念である「気」「血」「水」のうち、「気」と「血」が流れる通路のことを言います。
【ツボとは】
経絡上に分布する重要なポイントを経穴(けいけつ)=ツボといいます。
お灸には、この経穴に温熱刺激を与えることで経絡の流れを改善し、免疫機能や代謝機能を高め、病気になりにくい体を作る効果があると言われています。
お灸ってなんなの?
お灸はもぐさをツボの上に乗せて、火をつけることで治療を行います。
このもぐさはヨモギの葉の裏の綿毛を生成して作ります。
ヨモギは生薬として利用されたり、草餅として食用にされたりすることもある植物ですので、ご存知の方も多いでしょう。
生のヨモギ100㎏から精製されるもぐさは、500g程度です。
もぐさの値段が安くないのには、このような理由があるようです。
このようにヨモギからできたもぐさは、火をつけると時間をかけて燃えるため、お灸に適している材料と言えます。
もぐさを作り出した昔の人の知恵に感心させられます。
お灸は治療法の分類でいえば温熱療法の部類になります。
経絡上の経穴に対して温熱刺激を与え、経絡の流れを良くすると言われていますが、科学的な理由づけもされています。
多くの解釈がありますが、主なものをご紹介しておきます。
オピオイドは、オピオイド受容体に作用して痛覚の発生を抑制すると言われています。【お灸(温熱刺激) → 内因性オピオイド放出 → オピオイド受容体 → 鎮痛】
このような作用があるために、お灸によって痛みが軽減すると考えられています。
腰痛はお灸で治るのか?
ここで、本題です。
お灸には鎮痛効果がありますので、腰痛を抑制することが可能とされています。
1997年のアメリカ国立衛生研究所(NIH)の発表では、鍼灸の有効性が挙げられており、有効性のある疾患等の中に腰痛も含まれています。
また、
2002年に発行されたWHOの報告書によっても、その有効性が述べられているようです。
このように、痛みに対する鎮痛効果(対症療法的)は期待できると考えて良さそうですが。
腰痛の原因には様々なものがあるため、完全に治せるかということについていえば、難しいとも考えられます。
その中で、お灸で腰痛が治る・軽減する。
という人もいれば、
お灸では治らない、効果がなかった。
という人がいるのが実際です。
これは、お灸だけに限った事ではなく。
どんな治療でも起こる事なので、当たり前な事でしょう。
なので、
まずは、お灸を試してみる。
というのは、良い考え方だと思います。
お灸のポイントについて
では、お灸のポイントについて話していきますね。
熱い・痛い時は我慢した方がいいのか?
過去には、故意に強い温熱を加え、火傷を作る方法(有痕灸 ゆうこんきゅう)が多く用いられていましたが、今ではあまり用いられていないようです。
現代のお灸は、火傷を起こさない程度の温熱刺激を与える無痕灸が主流になっているといってよいでしょう。
したがって、
お灸が熱すぎたり、痛みを生じたりする場合は無理に続ける必要はありません。
腰痛のツボについて
志室は腰痛、冷え性などに効果があるとされています。
ツボの位置は第2腰椎棘突起外側3寸です。
※棘突起(きょくとっき)…椎骨の後ろの出っ張り
腰陽関は、骨盤のゆがみ、姿勢の崩れ、腰痛に効果があるとされています。
ツボの位置は、腸骨の上を結ぶ線、第4および第5腰椎の棘突起の間です。
せんねん灸ってどうなの?効果あるのか?
自宅でのお灸ができる市販品として「せんねん灸」があります。
せんねん灸ってなに?
従来、もぐさを直接皮膚の上に置く直接灸の他に、生姜やニンニクのスライスの上に灸を置く間接灸がありました。
この間接灸にヒントを得て作られたのが「せんねん灸」です。
せんねん灸は紙パルプを台座として、上部に巻きもぐさが取り付けられています。
台座の裏側は接着面となっていますので、ツボに貼ることができて、体を少し動かしたくらいでは落ちない仕組みになっています。
せんねん灸はバリエーションが豊富で、次のようなものがあります。
- 火を使うお灸
- 香りが選べるお灸
- 煙の出ないお灸
- 火を使わないお灸
また、温熱レベル(1~5)で選ぶこともできます。
せんねん灸の使い方
①準備するもの
- 『せんねん灸』…初めて行う場合は、温熱レベルの低いタイプを選びます
- 『ツボ図(ツボブック)』…ツボの位置と効果を確認します
- 『点火器』…ライター、専用の点火器など
- 『灰皿(水を入れておく)』…使用済みのお灸の火を消します
- 『サインペン』…ツボの位置に印をつけます
- 『濡れタオルなど』…火を使うため濡れタオルなどを用意しておくと安心です
②ツボ図などでツボの位置を確認し、サインペンで印をつける
③せんねん灸の台座の裏側の剥離紙をはがして指先にくっつける
④ライターなどで火をつける(煙が出ればOK)
⑤ツボにせんねん灸を貼る
⑥暖かい感じから始まり、次にピリピリとした熱さを感じたら、せんねん灸をすぐに外す
※1個目のせんねん灸で、ピリピリした感じが得られない場合は、2個目、3個目まで続けてお灸をすることができます。
3個めでもピリピリした感じがしない場合は、翌日同じツボにお灸をします。
お灸についての考え
最近はあまり見かけることはなくなりましたが、数十年前に患者さんのリハビリをしている時、膝の周りなどにお灸の痕のついている高齢者の方を見る機会がありました。
当時のお灸はかなり熱かったものと想像できます。
最近はソフトなタイプが主流になったせいか、痕が残ることも少なくなったようです。
お灸は熱くて、痕が残るからと使用を断念していた方には、現在のソフトなお灸を知っていただきたいと感じます。
お灸についての体験談は、もちろん効果についての個人差があるので、様々なものとなります。
具体例では、初心者用のお灸では温熱レベルが低すぎて、効果が感じられないなどの評価もあります。
熱さの感じ方は、皮膚の状態、感受性等によって変化します。
この点については、お灸の種類を変えるなどして、自分に適した温熱の物を見つける工夫も必要でしょう。
腰痛に対するお灸の体験談では、お灸を行うことで数時間痛みが和らいだなどの効果を聞くことができます。
その他、体が温まる、体が軽くなる、肩が軽くなる、リラックスできる、元気が出るなどプラスの評価を多く耳にします。
マイナス評価としては、ちょうどいい温熱のものを探すのが難しいとか、肌の具合によっては熱すぎたというものがあります。
浮腫(むくみ)があるなど、皮膚の状態が良くない場合は、注意して行わないと、火傷の危険性もありますから、自分で行う場合は温熱の低めの物を使用するなどの注意が必要でしょう。
お灸の温度が高い=治療効果が高い。
ということではありませんので、安全な温度で無理をせず行うことがポイントであろうと思います。
市販品を使用すれば、自宅で自分でもできるお灸ですが、有効なツボの位置の確認と安全な施術のためにも、できればプロの鍼灸師の治療院等で治療を受けてみることをおすすめします。
まとめ
今回は腰痛に対するお灸についてご紹介しました。
お灸は2000年の歴史をもつ治療法です。
経絡上に存在する経穴に行うお灸は、「気」「血」の流れを改善し身体を病気になりにくい状態にすると言われています。
近年では、お灸の効果が科学的に説明され、また公的な機関からその有効性についてアナウンスがあるなど、治療効果が認められています。
お灸は腰痛などの痛みを抑える効果があるとされています。
お灸は市販品を使って自分で行うことも可能ですが、危険が全くないわけではありませんので、十分に注意して行う必要があります。
正しいツボの位置が分からなかったり、自分で行うことに不安があったりする場合は、まず資格を持った鍼灸師の治療を受けて、正しいお灸を経験してみると良いでしょう。