こんちわ。
腰痛治療家で理学療法士の平林です。
年齢を重ねると、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなることがあります。
比較的若年層でも、椎間板の変性などで同じような状態になることもあります。
これを「脊柱管狭窄症」と呼びます。
この脊柱管狭窄症は、症状によって医師から手術をすすめられることもしばしばあります。
その中で、果たして手術で治るのでしょうか?
危険はないのでしょうか?
などと。
不安に感じている方もいらっしゃることでしょう。
そこで、今回は脊柱管狭窄症と手術について話していいきます。
この記事を読めば、
◎ 脊柱管狭窄症に手術はいらない場合も沢山ある。という事がわかる
◎ 脊柱管狭窄症を治す為の知識を身に着ける事ができる
といった、2点メリットがあります。
この記事を最後まで読んで、脊柱管狭窄症で辛い思いをしているあなたの参考になれば幸いです。
では、本日もよろしくお願いいたします。
脊柱管狭窄症は手術しなくても治る場合もある
我が国では高齢化に伴い、脊柱管狭窄症の人の割合は増えています。
診断を受けていない「かくれ脊柱管狭窄症」の数も少なくないでしょう。
脊柱管狭窄症は必ずしも治療が必要というものではありません。
脊柱管が狭窄していても症状が出ていなければ、基本的に治療の対象とはならないのです。
症状が出ていても、多くの場合保存療法を行います。
なので、手術に至る人の割合は大きくはありません。
手術をしない方法で治ったり、維持できたりする場合でまずは、経過を見るのも良いでしょう。
手術以外でも治療方法はある
脊柱管狭窄症の診断を受けて、すぐに手術ということはほとんどありません。
一般的にはまず保存療法が開始されます。
最初に行われる治療方法としては以下のようなものがあります。
薬物療法
血流を改善する薬…痛み・しびれの改善、間欠性跛行の改善
消炎鎮痛剤…痛みの軽減
筋弛緩薬…筋肉の緊張を和らげる
ビタミン剤(B??)…神経への栄養
※痛みが強い場合は、硬膜外ブロックや神経根ブロックなど、局所麻酔薬を使用して痛みを止めることもあります。
日常生活の改善
シルバーカーの使用、腰への負担が少ない姿勢や動作法の獲得
理学療法
運動療法(ストレッチ、筋トレ)、温熱療法など
装具療法
コルセットの使用
手術にはリスクが必ずついてくる
手術のデメリットについてお伝えします。
まずは、手術にはリスクが付き物という点です。
主なリスクには以下のようなものがあります。
- 感染の恐れ
- 手術後の傷痕
- 神経の損傷
- 麻酔の危険性
- 術後の痛み
- 症状の悪化
- 脊柱の不安定化
- 髄液のもれ
- 血栓症
など
以上手術のリスクを挙げましたが、現代では起こる危険性が低いという点を付け加えておきます。
手術は費用もかかる
健康保険適用の手術の場合では、高額療養費制度を活用することで費用を抑えることは可能ですが、それでも10~20万円程度の費用を用意する必要はあるでしょう。
手術方法、検査入院の有無やリハビリ期間によっても異なりますので、実際に必要な費用は手術を受ける病院で確認する必要があります。
例) 拡大開窓術の場合(保険適用3割負担の場合)
検査入院(4日)…約7万円
手術・リハビリ(約2週間)…約30万円
※高額療養費制度利用前の額
脊柱管狭窄症を治す為に
保存療法では薬物療法や理学療法などを行いますが、その中で特に重要なのは日常生活(姿勢)の改善、運動療法です。
正しい姿勢を意識する
脊柱にとって正しい姿勢は重要です。
特に腰椎部分は負担がかかる場所なので、姿勢の良し悪しの影響が大きくなります。
ここで、1例を挙げてみましょう。
椅子に前かがみに腰かけると、まっすぐに立った時の約2倍の負担がかかると言われています。
脊柱は椎骨によって構成されていますが、それぞれの椎骨の間には椎間板が存在します。
これらの椎間板はクッションの役割を果たします。
腰椎は上半身の重量を支えていて、曲げ伸ばしを繰り返しますので、この椎間板へのストレスは大きいものです。
椎間板は加齢とともに水分が減少し、押しつぶされてしまいます。
そして、飛び出して脊柱管を狭くする原因ともなります。
で、姿勢が悪くなると、この椎間板へのストレスが増し、脊柱管の狭窄を助長してしまいます。
このような理由があるため、良い姿勢を取ることが重要と言えます。
脊柱は横から見ると、自然な弯曲があるのが正常です。
腰椎部分は軽く前に凸の状態が理想です。
基本的にはこの姿勢を目標とします。
椅子に腰かけると背中が丸くなりやすいので特に注意が必要です。
ただし、すでに脊柱管の狭窄が進行し、良い姿勢を保つことで症状が強くなる場合はこの限りではありません。
狭窄が進行した場合、前かがみで症状が軽減することも多いため、症状を見ながら一番症状が軽くなる姿勢を探してみてください。
ストレッチなどの適度な運動をしよう
理想的な姿勢を保つためには、脊柱の正常な可動域(動く範囲)と可動性が必要となります。
椎骨と椎骨の間には関節が構成されていて、靭帯や筋肉も付着しています。
これらの可動性、柔軟性が低下すると、動きが制限され、正しい姿勢を保持することに対して、マイナス要因となります。
したがって、ストレッチなどを行って、脊柱の柔軟性を改善すると姿勢の改善に効果があります。
また、姿勢は脊柱だけでなく下肢の柔軟性の影響もありますので、股関節周囲などのストレッチも併せて行うと良いでしょう。
ストレッチについては、多くの方法が紹介されていますが、全ての種目を行う必要はありません。
ポイントを押さえた数種類を選んで行うと良いでしょう。
継続して行うことに意味がありますので、無理に種目を増やさず、行いやすい数種類を毎日行うようにすると良いです。
ここでは、いくつかの種目をご紹介しておきます。
ストレッチは反動をつけず、ゆっくりと筋肉を伸ばすように行いましょう。
1つの動作にかける時間は20秒から30秒程度が目標となりますが、最初は短時間でも良いです。
動作によって、足の方にしびれや痛みが走る場合は、神経を圧迫している可能性がありますので、その運動は中止してください。
どんな運動をしたら、調子がいいのか、悪いのかは記録しておくといいでしょう。
そうすれば、自分が調子が良くなるストレッチはどれか?
というのが、明確になり、以後、自分にとってどんな運動が適しているのかが分かるようになります。
①脊柱の動きを良くするストレッチ
脊柱の曲げ伸ばし(屈曲・伸展)、回旋、側屈などの動きを行います。
両膝を胸に引き付けます。
腰を丸めるように行いましょう。
腰椎を伸展(反らせる)します。
背筋を使わず、上半身を手で押し上げます。
無理のない程度に。
まず、反らす角度は小さめ、時間は短めからスタートしましょう。
上体を横に傾けます(側屈)。
左右差がないか、どちらの方向が楽か記録しておきましょう。
回旋します。
左右差がないか、違いを意識して行いましょう。
股関節の屈曲・伸展を行います。
ももの裏側(ハムストリングス)を伸ばします。
タオルなどを利用しても良いでしょう。
脊柱管狭窄症で手術を考えた方が良いポイント
脊柱管の狭窄の多くの例では、手術を行わない保存療法で対応が可能ですが、症状によっては手術療法がすすめられる場合もあります。
以下のような症状が出現した場合は、手術の検討が必要であると考えられます。
ただし、脊柱管狭窄の状態は人それぞれです、最終的に手術をするかどうかの判断は、専門の医師と相談の上決定してください。
手術の検討が必要なポイント
・排泄機能の障害(排尿、排便の障害)がある
・間欠性跛行などの歩行障害が悪化して、歩行距離が短くなっている
・安静にしていても、常に足などにしびれが出る
・筋力低下など、麻痺の症状が進行している
・日常生活の動作が困難になってきている
・自分の希望(今の仕事や趣味を続けたいなど)
・痛みやしびれが辛過ぎて我慢ができない
その時点での症状が軽い場合でも、将来のことを考えて早めに手術を受けるという考え方もあります。
活動性が高く、仕事や趣味活動などを積極的に行いたい人の場合では、早く手術を受けた方が良い場合もあります。
逆に、高齢で活動性が低い場合は、無理に手術をせず保存療法を行いながら生活する方が良いこともあります。
脊柱管狭窄症に対する一般的な考え
脊柱管狭窄症では、多くの場合保存療法から開始され、数か月(3~6カ月)様子を見ることが多いでしょう。
この期間に症状が改善するか、進行しなければ手術を行わず、保存療法を継続します。
逆に症状が進行していくようであれば、手術を考慮する必要があると考えられます。
手術を行っても、完全によくならないこともあります。
よく聞くのは足のしびれなどの症状です。
手術は成功しても、神経に受けたダメージが大きかった場合(圧迫が強かった場合など)では、しびれが残ることもあります。
脊柱管狭窄症の症状が出現してから手術までの期間が長くなると、神経への圧迫期間が長くなりますので、神経の回復にとって不利になると考えられます。
したがって、
ある期間(例えば3カ月)保存療法を行ってみて、症状の改善がなく、症状が進行するようであれば、早めに手術の決断をした方がよいでしょう。
近年では侵襲(しんしゅう:生体を傷つけること)が少ない手術方法も盛んに行われるようになってきていますので、手術が必要な場合は、このような手術方法を選択すると良いのではないかと思います。
低侵襲の手術を行っている医師がいらっしゃいますので、相談されることをおすすめします。
脊柱管狭窄症の手術におけるまとめ
今回は脊柱管狭窄症の治療における手術のデメリットや、手術以外の治療法についてお伝えしました。
脊柱管狭窄症の治療法としては、保存療法を用いられることが多く、手術が行われることはそれほど多くありません。
姿勢の改善や柔軟性の向上、日常生活の改善などしっかりとした対策を行うことで、症状を改善させる可能性があります。
それでも、症状が悪化したり、日常生活上に困難を感じたりする場合は手術の検討も必要となります。
脊柱管狭窄症は、薬だけで改善するものではないことを理解して、対策を継続していただければと思います。
今回の話も参考になれば嬉しいです。
本日も最後までありがとうございました。