こんちわ。
腰痛治療家で理学療法士の平林です。
運動不足が腰痛の原因の1つであるとも言われています。
その中で、どのような運動をしたらよいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
特に有酸素運動と無酸素運動の選択においては判断が難しい場合もあります。
そもそも、有酸素・無酸素運動ってなに?かもわからない人もいるでしょう。
今回は腰痛と有酸素運動・無酸素運動について考えてみました。
この記事を読むメリットは、
○ 腰痛には、有酸素・無酸素運動どちらが有効なのかわかる
○ 慢性腰痛は体を動かすと良くなりやすい
といった3つの観点が理解できるでしょう。
是非、最後まで読んで、腰痛改善のための運動メニューを選択する際の参考にしていただければ幸いです。
では、本日もよろしくお願いいたします。
腰痛に有酸素運動はやっていいのか?
まず有酸素運動について考えていきます。
有酸素運動ってなに?
有酸素運動とは、ウォーキングやサイクリングなど、長時間継続して行う運動のことを言います。
家庭内で行う1日かけての大掃除や模様替えなんかも有酸素運動の部類に入る場合もあります。
スポーツでなくても、継続して、ある程度の強度で体を動かしていれば有酸素運動を行っていることとなります。
運動する際には筋肉が収縮しますが、この収縮にはエネルギー(ATP)が必要です。
長時間継続してエネルギーを供給する必要がある場合、酸素と脂肪などをもとにエネルギーを作り出す必要があるのです。
このように酸素を使用してエネルギーを供給するための運動を有酸素運動と言うのです。
腰痛の時に有酸素運動はアリか?ナシか?
急性の腰痛(いわゆるぎっくり腰など)を発症した直後は痛みが強く、全く動くことができないこともあるでしょう。
このような状態を除いて、一般的な腰痛(非特異的腰痛…原因が特定できない腰痛)の場合、安静よりも動いたほうが予後は良いということが分かっています。
また、
ウォーキングなどの有酸素運動を行うと、脳の血流が改善し、疼痛を抑制する物質が放出されやすくなると言われています。
ストレス解消の効果も望めますので、鎮痛効果もアップするでしょう。
また、
有酸素運動によって脂肪が燃焼されれば、肥満の解消にも貢献し、腰への負担軽減につながります。
したがって、
腰への負荷の少ない有酸素運動を行うことは、腰痛に対して「アリ」ということが言えます。
腰への負担が少ない有酸素運動を選ぶという点がポイントです。
有酸素運動が良いからと言って、痛いのを我慢してジョギングを行ったりすることは、逆効果となることもあるので、腰の痛みが増加しない運動を選択してください。
エアロバイクや水中ウォーキングなど、腰への負担の少ないものがおすすめです。
腰痛に無酸素運動はやっていいのか?
次に、無酸素運動について考えてみます。
無酸素運動ってなに?
無酸素運動は、エネルギー産生に酸素を必要としない短時間の強度の高い運動です。
強度の高い運動では、酸素を使わずに糖を分解するなどしてエネルギーを得ます。
運動の持続する時間は数秒から数十秒と言われていますが、運動強度により異なってきます。
運動強度と持続時間によっては、無酸素運動と有酸素運動が同時に行われることもあります。
無酸素運動として、短時間で終わる強い負荷でのウェイトトレーニングなどの筋トレが良い例になります。
その他、短距離~中距離走なども主に無酸素運動として捉えられます。
腰痛の時に無酸素運動はアリか?ナシか?
無酸素運動によって筋力を強化することは可能です。
不十分な体幹筋の筋力を改善し、筋力のバランスを整えるなど、筋力の調整を行うことで、姿勢を改善させ、腰痛の改善につなげることが可能です。
全身を使うことの多い有酸素運動に比べて、無酸素運動は筋肉を個別に訓練することが行いやすいため、腰痛がある状態でも、腰部に影響のない部位の筋肉を鍛えられます。
なので、
痛みの出ない方法を選択しやすいためメリットがあると言えるでしょう。
したがって、無酸素運動も「アリ」なのです。
このように無酸素運動は工夫して行うと、腰痛にとって有益であると言えます。
ただし、
腰部への負担が強い運動は、腰痛を悪化させる危険性もあるため、無酸素運動を行う際は、運動方法による腰への負担について十分理解して行うことが大切です。
つまり、
有酸素運動も無酸素運動も腰痛には効果的である。
という事が言えます。
筋力をつけたい、体を動かしてリフレッシュしたい。
など、目的が若干変わる事で有酸素か無酸素運動かを選択するのがいいでしょう。
腰痛は体を動かす方が良くなりやすい。という事実
腰痛の研究によると、非特異的腰痛においては、痛みに応じて活動した人の方が、ベッドで安静にしていた人よりも、痛みが改善し機能的にも良かったという結果が得られています。
(『非特異的腰痛・ひとくいてきようつう』:とは、原因が明確にされていない腰痛の事をいいます。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった、診断がつきづらい腰痛の事を非特異的腰痛と言うのです。)
ただし、坐骨神経痛を伴う腰痛(椎間板ヘルニアなど)の場合、痛みと機能に大きな差がみられませんでした。
このように、原因の特定できない腰痛においては、基本的には痛みに応じて運動を行った方が、腰痛は良くなりやすいと言えるでしょう。
ただし、100%そうであるというわけではありません。
運動によって痛みが強くなる危険性もありますので、運動を行ってみて調子が悪くなるようであれば、運動の量や質を変えるなどの調整が必要となります。
慢性腰痛と言われる、長引く痛みは運動する方が良い
慢性疼痛のある者に対して行われた研究では、一定の頻度で行う継続的な運動を行うことで、痛覚の感受性が低下するという結果が得られています。
痛覚の感受性が低下すれば、痛みは感じにくくなります。
運動を行うと、脳内にドーパミンやエンドルフィンなどの物質が放出されやすくなります。
また、
交感神経が強く働いた時(強い興奮状態など)にアドレナリンが放出されることも有名です。
これらの物質には疼痛を抑制する働きがあるため、運動すると腰痛が緩和されるという理論に結びつきます。
ランニングで経験する「ランナーズ・ハイ」や、興奮状態での怪我の痛みは感じにくいなどは、これらの物質が過剰に分泌しているからという事が言えるでしょう。
慢性腰痛を持っている人は、痛みによって常に精神的なストレスを受けていることとなりますが、その他の生活上のストレスも加わり、結果、大きなストレスを継続的に抱えている状態となります。
このストレスは、脳内のセロトニンという物質を減少させ、正常の状態では脳内で起こるはずの鎮痛作用を減弱化してしまいます。
鎮痛作用が弱くなると、少しの痛みでも強く感じるようになり、さらにストレスは上昇してしまいます。
こんな状態では悪循環が繰り返され、なかなか痛みが改善しない。
という結果になるのです。
運動には、ストレスを軽減し、気分を改善させる効果があるので、運動を行うことで、この悪循環のループを断ち切ることが可能となります。
参考文献)
2) 松原 貴子、「身体運動による疼痛緩和の神経メカニズムの解明と慢性痛に対する運動療法の開発」
まとめ
今回は腰痛と無酸素・有酸素運動についてお伝えしました。
原因が特定できない非特異的腰痛の場合、安静でいるよりも、痛みに応じて運動を行った方が予後(痛みの改善、機能面)は良いということが分かっています。
運動には、大きく分けると無酸素運動と、有酸素運動に分けられますが、それぞれの特徴を活かして併用することによって、腰痛改善に役立てることができるでしょう。
運動には筋力を高め、筋力のバランスを調整し、また精神的ストレスの軽減や疼痛抑制システムを正常化するなど様々な効果があります。
運動による腰への影響を考慮しながらエクササイズを継続することで、腰痛の改善も期待できるでしょう。
慢性的な腰痛でお悩みの方で、日常的に運動を行っていない方はこれを機会にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
ただし、
症状として坐骨神経症状(足のしびれ、痛みなど)がある方の場合、非特異的腰痛ではなく、椎間板ヘルニアなどの疾患を発症している可能性もあるので、そこは注意してください。
運動を行っているときや日常生活上、このような症状を感じることがあれば、整形外科を受診してみましょう。
最初は腰痛だけだったものが、気付かないうちに椎間板内の髄核が飛び出してきていて、椎間板ヘルニアに移行していることもあります。
なので、
十分注意しながら運動を行っていただければと思います。
あなたの腰痛が少しでも軽減すれば幸いです。
本日も最後までありがとうございました。