こんにちは、腰痛治療家で理学療法士の平林です。
腰が痛いとき、「ストレッチをしたいけれど、どこをどう伸ばせばいいのか分からない」「かえって悪化しないか不安」という方は多いと思います。この記事の答えは次の3つです。
- 伸ばすのは「背中・お腹・体側(回旋と横倒し)」の3方向の筋肉。この記事では6種目を手順つきで紹介します
- 強度の目安は「気持ち良い所まで」。痛みを我慢して伸ばすのは逆効果です
- 痛みやしびれが強くなるなら中止し、ぎっくり腰直後は無理をしないでください
私自身、腰痛持ちで、腰が重くなると無意識に体を横に倒したり前屈したりしてしまいます。臨床でも腰痛の方にストレッチを指導してきましたが、「やり方」と「強さ」を間違えている方がとても多い印象です。ここでは、自宅でできる安全なやり方に絞ってお伝えします。
なお、腰痛を治す方法の全体像(ストレッチ以外の選択肢や考え方)は、こちらのハブ記事にまとめています。
腰痛を治す方法の全体像はこちら
腰痛にストレッチが役立つ理由と「気持ち良い所まで」の意味
正しい方法で行えば、ストレッチは腰痛の改善が期待できるセルフケアの一つです。
筋肉は使わずに放っておくと硬くなり、伸びにくくなります。硬くなった筋肉は血流が悪くなり、こわばりや重だるさが痛みにつながりやすくなります。ストレッチで筋肉を適度に伸ばすと、血流の改善や筋肉の緊張の緩和が期待でき、「こわばり→痛み」の流れを断ち切る助けになります。
ただし、ストレッチの効果は「どれだけ強く伸ばしたか」で決まるわけではありません。臨床で感じるのは、腰痛がなかなか落ち着かない方ほど「痛いほうが効いている気がする」と頑張りすぎている、ということです。
強度の目安は「痛気持ち良い」の手前
伸ばしている筋肉に「気持ち良い」と感じる程度の張りを感じる所で止めます。具体的には次の感覚を基準にしてください。
- 伸ばしている部分に「心地よい張り」を感じる
- 呼吸が止まらず、自然に続けられる
- 伸ばしている間に痛みが増えていかない
「痛いけれど我慢できる」は強すぎます。筋肉は強く引き伸ばされると反射的に縮もうとするため、かえって硬くなることがあります。「気持ち良い所まで」でやめたほうが、結果的に筋肉はゆるみやすくなります。
腰痛ストレッチで伸ばす3方向の筋肉
腰痛のストレッチでは「どの筋肉を伸ばしているか」を意識することが大切です。覚えておきたいのは次の3方向です。
- 背中側(脊柱起立筋):背骨に沿って縦に付く筋肉。体を丸める動作で伸びます
- お腹側(腹筋群):背中の反対側。体を軽く反らす動作で伸びます
- 体側(回旋・横倒しに関わる筋肉):反対側にひねる・倒す動作で伸びます
腰は「曲げる・反る」だけでなく「ひねる・横に倒す」動きも組み合わせて使っています。どれか一方向だけでなく、3方向をバランスよく伸ばすことが、腰全体のこわばりを減らすポイントです。
腰痛ストレッチのやり方6選(手順・秒数つき)
ここから具体的なやり方です。すべて「気持ち良い所まで」で止め、伸ばしている間は呼吸を止めないようにしてください。目安は各種目20〜30秒を2〜3セットです。
1. 膝抱えストレッチ(背中・腰の筋肉)
仰向けで行う、もっとも負担の少ない基本のストレッチです。
- 仰向けに寝て、両膝を立てます
- 両手で片膝(または両膝)を抱え、ゆっくり胸のほうへ引き寄せます
- 腰からお尻にかけて心地よい張りを感じる所で止め、20〜30秒キープします
- ゆっくり戻し、反対側(または両膝で)も同様に行います
目安:20〜30秒×2〜3回。首や肩に力が入らないよう、頭は床につけたままにします。
2. キャット&ドッグ(背中とお腹を交互に)
背中側とお腹側を交互に動かし、背骨全体のこわばりをほぐします。
- 四つ這いになり、手は肩の真下、膝は股関節の真下に置きます
- 息を吐きながら背中を丸め、おへそをのぞき込むようにします(猫のポーズ)
- 息を吸いながら背中をゆるめ、軽く胸を前に向けて背中を反らせます(犬のポーズ)
- 痛みのない範囲でゆっくり繰り返します
目安:往復を5〜10回×2セット。反らす動きで腰に痛みが出る場合は、丸める動きだけにしてください。
3. お腹側を伸ばすストレッチ(うつ伏せで軽く反る)
腹筋群と体の前面を伸ばします。反らすと痛みが強くなる方は行わないでください。
- うつ伏せになり、肘を肩の下に置きます
- 肘で軽く上体を支え、お腹の前側が心地よく伸びる所で止めます
- 腰を反らせようとせず、「胸を前に出す」イメージで20〜30秒キープします
- ゆっくり戻します
目安:20〜30秒×2〜3回。慣れてきても腕を伸ばして大きく反る必要はありません。
4. 寝たままひねるストレッチ(回旋の筋肉)
体側と腰回りの筋肉を反対側にひねって伸ばします。
- 仰向けに寝て、両膝を立てます
- 両腕を横に広げ、両膝をそろえたまま片側にゆっくり倒します
- 肩が浮かない範囲で、腰から体側に心地よい張りを感じる所で止めます
- 20〜30秒キープし、反対側も同様に行います
目安:左右20〜30秒×2回。膝が床まで届かなくても構いません。途中で止めてください。
5. 体側を伸ばすストレッチ(横に倒す筋肉)
立った姿勢または座った姿勢で、体の側面を伸ばします。
- 足を肩幅に開いて立ち(または椅子に座り)、片手を頭の上に上げます
- 息を吐きながら、上げた手の反対側へ上体をゆっくり倒します
- 脇腹から腰の横にかけて心地よい張りを感じる所で止め、20〜30秒キープします
- ゆっくり戻し、反対側も同様に行います
目安:左右20〜30秒×2回。体が前に倒れないよう、真横に倒すことを意識します。
6. お尻(殿部)のストレッチ
腰痛の方によく見られる「お尻や太ももの突っ張り」は腰痛と関係が深く、お尻の筋肉を伸ばすと腰が楽になる方が多いです。
- 仰向けに寝て両膝を立て、片方の足首を反対側の膝の上にのせます
- 下側の太ももを両手で抱え、胸のほうへゆっくり引き寄せます
- のせた側のお尻に心地よい張りを感じる所で止め、20〜30秒キープします
- 反対側も同様に行います
目安:左右20〜30秒×2回。引き寄せる途中で腰が浮かないようにします。
体操としてもう少し簡単に続けたい方には、「これだけ体操」も選択肢になります。
これだけ体操のやり方はこちら
腰痛ストレッチの頻度と続け方の目安
頻度の目安は「1日1〜2回、1回5〜10分」です。
ストレッチは1回で劇的に変わるものではなく、続けることで筋肉の柔軟性が少しずつ変わっていきます。忙しい方は、6種目すべてをやろうとせず、次のようにタイミングで分けるのがおすすめです。
- 朝:膝抱え、キャット&ドッグ(寝起きのこわばりをほぐす)
- 仕事の合間:体側のストレッチ(座ったままできる)
- 夜・入浴後:ひねり、お尻、お腹側(体が温まっていて伸びやすい)
私も「全部やらなければ」と思うと続かないタイプなので、寝る前に2種目だけ、と決めてから習慣になりました。「短時間でも毎日」のほうが、週1回まとめて長時間やるより効果を実感しやすいと感じています。
やってはいけないケースと中止の目安
ストレッチは万能ではなく、行わないほうがよい場面があります。次に当てはまる場合は無理をしないでください。
- ぎっくり腰の直後(発症から2〜3日程度):炎症が強い時期に無理に伸ばすと悪化することがあります。痛みが落ち着いてから、膝抱えなど負担の少ない種目から再開してください
- ストレッチ中または後に、痛みやしびれが強くなる:その種目はすぐに中止してください
- 反らすと痛い、丸めると痛い、など特定の方向で痛みが出る:その方向の種目は避け、痛みのない方向の種目だけ行ってください
- 反動をつけて伸ばす、痛みを我慢して伸ばす:筋肉が反射的に縮み、逆効果になりやすい方法です
「安静にしたほうがいいのか、動かしたほうがいいのか」で迷う方は、こちらの記事も参考にしてください。
腰痛は安静と動かすのどっちがいい?
早めに医療機関を受診してほしい症状(レッドフラグ)
次の症状がある場合は、ストレッチで様子を見るのではなく、早めに整形外科など医療機関を受診してください。
- 足のしびれや脱力が進行している
- 排尿や排便に異常がある(出にくい、漏れる、感覚が鈍い)
- 発熱を伴う腰痛
- 安静にしていても、夜間にも続く痛み
- 転倒や事故など外傷のあとの痛み
これらは筋肉のこわばりとは別の原因が隠れている可能性があり、セルフケアで対応すべきものではありません。
よくある質問
Q1. ストレッチは朝と夜、どちらが効果的ですか?
どちらでも構いませんが、目的で使い分けるのがおすすめです。朝は寝起きのこわばりをほぐす目的で、膝抱えやキャット&ドッグなど負担の少ない種目を。夜は入浴後など体が温まった状態で行うと筋肉が伸びやすく、ひねりやお尻のストレッチに向いています。どちらも「気持ち良い所まで」が目安です。
Q2. ストレッチを続けても腰痛がよくならないのはなぜですか?
考えられる理由は「強度が強すぎる」「痛みの出る方向に伸ばしている」「筋力や姿勢、生活習慣など別の要因が大きい」の3つです。まずは強度を「気持ち良い所まで」に落とし、痛みの出ない種目だけに絞ってみてください。2〜3週間続けても変化がない、あるいは悪化する場合は、自己判断を続けずに医療機関で相談してください。ストレッチ以外の選択肢については、腰痛を治す方法の全体像で整理しています。
Q3. 腰痛がない日もストレッチをしたほうがいいですか?
はい、痛みがないときこそ続ける価値があります。筋肉の柔軟性は数日でもとに戻りやすく、痛みが出てからでは強度の調整も難しくなります。痛みがない日は種目を減らしてもよいので、習慣として続けることが再発予防につながります。予防の考え方は腰痛の予防法の記事で詳しく解説しています。
まとめ:腰痛ストレッチは「3方向」を「気持ち良い所まで」
腰痛ストレッチのやり方のポイントをまとめます。
- 伸ばすのは「背中・お腹・体側(ひねり・横倒し)」の3方向。今回の6種目をバランスよく行う
- 強度は「気持ち良い所まで」。痛いほど効く、は誤解
- 1種目20〜30秒×2〜3回、1日1〜2回。短時間でも毎日続ける
- ぎっくり腰直後や、痛み・しびれが強まる場合は中止する
- レッドフラグ症状がある場合は早めに医療機関へ
忙しいと体のケアは後回しになりがちですが、ストレッチは道具も場所もいらず、短時間でできるセルフケアです。まずは寝る前に1〜2種目からでも、始めてみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療の代わりになるものではありません。症状が続く場合や強い痛み・しびれがある場合は、整形外科など医療機関を受診してください。


