こんにちわ。
腰痛治療家で理学療法士の平林です。
腰椎の疾患に、腰椎すべり症というのがあります。
背骨は積み木のように、小さい骨が積み重なってできており、腰の一部分がずれているよ!
というのが、腰椎すべり症です。
で、腰椎すべり症は、他の病状を併発していることが多く見られます。
今回は、【腰椎すべり症は他の病状を併発しやすい】をテーマに記事にしました。
この記事は
◎ 腰椎すべり症と併発する病状について知れる。そして、予防に役立てる事ができる。
といったメリットがあります。
最後まで読んで、予防、対策に役立てて欲しいと思います。
では、本日もよろしくお願いいたします。
1 腰椎すべり症は二次的に併発しやすい病状である
その前に、腰椎すべり症を簡単に説明します。
〇腰椎(脊椎)すべり症とは
出典:標準整形外科学、医学書院
腰椎すべり症とは、1つの小さな骨が、下側の小さな骨に対して前方に滑った状態の総称です。(上記出典写真より、椎体がずれているのが読み取れる)
すべり症は、その原因別に数種類のバリエーションとして分けられています。
で、腰椎すべり症の原因を突き詰めて解析していくと、何らかの病状に併発して起こっていることがわかります。
まず、基本となる病状(原因)があって、それが起こったことによって二次的に腰椎が滑るという状態を見ることができます。
転落や交通事故など、腰椎に大きな力がかかる場合を除いて、何もない状態からいきなり腰椎が滑るということはないわけです。
腰椎すべり症にはいくつかのバリエーションがありますが、ほとんどの場合において、根本的な病状(状態)があった上ですべり症を発症しています。
二次的に生じてしまう理由としては、【姿勢の悪さや動作の癖】が考えられます。
例えば、まず、一次的な病状によって、痛みを感じていると、痛みを回避しようとして、姿勢が偏った状態になる可能性があります。
これによって、腰の背骨の一部への負担が多きすぎて、ズレてしまう可能性があるのです。
また、重い荷物の持ち運びなどで、いつものように決まった姿勢で、体を捻ってものを運び出したりしていれば、腰や背中には一定の負荷が生じるでしょう。
この毎日の一定の負荷の結果、腰椎がずれていた。
という事も考えられるのです。
ということで、腰椎すべり症は一次的な病状の回避行動の生まれによって、二次的に生じてしまう状態である事が考えられます。
2 腰椎すべり症に併発しやすい病状ってなに?
腰椎すべり症にはいくつかのパターンがありますが、それぞれについて以下にご紹介します。
① 先天性すべり症・脊椎下垂症
人体は、遺伝情報をもとに形作られ成長していきますが、必ずしもすべてが設計図通りにいくとは限りません。
骨の形成に障害を生じる骨形成不全など様々なものが存在します。
余談ではありますが、私も斜頸の状態で生まれ、治療のために首の筋肉を切る手術を受けました。
なので、先天的な異常は、それほど珍しくはないとも言えます。
本題に戻りますが、腰椎の下の仙椎(尾骨の部分)や椎骨の関節形成不全が起こることがあります。
このような先天的な形成不全があると、成長とともに椎骨の滑り(ずれ)を生じる可能性が高くなります。
かなり重度になると、第5腰椎が仙骨の前に滑り落ちてしまう「脊椎下垂症」を発症することもあります。
このように、すべり症は関節や骨の形成不全という病状に併発して起こることがあるのです。
② 分離性脊椎すべり症
椎骨は、椎間板と接している椎体と後方の椎弓部分からなっています。
後方の椎弓部分は、脊髄を通す穴が開いておりリング状になっています。
この後方部分は、激しいスポーツなどによって骨折を起こすことがあります。
この骨折は、多くの場合、10代の激しいスポーツによって腰椎の伸展(反らす)や回旋が繰り返されることによって起こります。
骨折を起こした後に骨がつながらないと、分離してしまいます(腰椎分離症)。
この腰椎分離症を起こすと、椎骨の前後の連結がないため、椎体部分が前方へ滑りやすくなります。
分離症に伴って生じたすべり症を分離性脊椎すべり症と言います。
③ 変性脊椎すべり症
先天的な要因もありますが、加齢などの影響によって椎間板の機能障害や、組織の変性などによって椎骨の安定性が損なわれ、椎骨が滑りやすくなることがあります。
このような状態は変性脊椎すべり症と呼ばれ、40歳以上の女性に多いと言われています。
変性脊椎すべり症は多くの場合、第4腰椎のすべり症です。
分離性脊椎すべり症と違って、椎骨の前後が分離していないため、すべりを生じると脊柱管が狭窄します。
したがって、この部位を通る馬尾神経を圧迫する馬尾障害を起こしやすくなります。
このように変性脊椎すべり症は、脊柱管狭窄症の原因の一つとなっています。
上記3つのすべり症のほかに、事故などによる外傷性すべり症、悪性腫瘍や感染性の脊椎疾患による病的脊椎すべり症があります。
ご紹介したように、脊椎のすべり症は何らかの病状に併発しているということが言えるでしょう。
で、もう1つ、腰椎すべり症と椎間板ヘルニアの併発についてもお伝えしておきます。
すべり症を発症するような状態では、すでに椎間板も変性し傷んでいる可能性もあるのですが、すべることが原因で、椎間板をさらに傷めてしまう危険が高くなります。
なぜなら、腰椎が滑ることで、上下椎体の接する面積が狭くなり、それだけ椎間板の受ける圧力が大きくなるからです。
圧力が高まれば、限界を超えた椎間板は破綻してしまい、内部の髄核が飛び出す可能性も大きくなると考えてよいでしょう。
腰椎が滑っている状態では、椎間板への負担を増加させ、ヘルニアの危険性も高くなるということにも注意をしておきましょう。
3 なんで、腰椎すべり症は併発しやすいのか?
ご紹介したように、腰椎すべり症は様々な病状に併発して起きやすいものです。
この理由について考えてみましょう。
理想的な立位姿勢では、腰椎部分は前方へ凸の弯曲を持っています。(人間は姿勢を保つ為に、背骨がS字に弯曲している)
上下の椎骨は関節や靭帯で連結されていますので、滑らかな連続性を保っています。
で、前提として、上下の椎骨は靭帯などで繋がっています。
この靭帯がない場合を考えてみると。
腰椎の4番目、5番目は椎体が斜め下を向いているのがわかると思います。
この場合、つなげるものがないので、滑り落ちる事が予想できますよね。
これは、例えば積み木を重ねたようなものです。
このように、もともと腰椎部分は弯曲があるために滑る方向への力が働きやすいんです。
人体の構造上、上半身を倒す、前かがみになる機会が多いので、このような場合はさらに滑る方向に力が増します。
強靭な靭帯としっかりした椎間板、関節の機能が保たれていれば、この滑る方向の力を止めることができますが、この部分に機能障害を生じると、物理的な力によって、弱い部分が滑り出してしまいます。
このような物理的な要因があるため、様々な腰部の機能障害・病状(分離症、変性など)に併発して腰椎の滑りが起こりやすいと言いうことができます。
4 分離症の予防の為に。
遺伝的な要因を含むものや加齢によるすべり症は、ある程度仕方のないものと考えられますが、分離性脊椎すべり症の場合は避けることができる場合も多いため、なんとか予防して欲しいです。
で、大切なのは、分離症を起こさないことです。
分離しなければ、すべり症のリスクは減少します。
早期から対策を行って腰椎の分離を予防しましょう。
そこで、以下の分離症予防のためのポイントをご紹介します。
- 小学生の時から熱心にスポーツをしている人は要注意
- ジャンプ、背中を反らす、腰をひねるなどを繰り返すスポーツは要注意
- スポーツをしていて腰痛を感じたら、すぐに整形外科へ
- 腰痛が骨折前のサインと考える
- 腰痛を放置して、無理に練習を続けると分離症のリスクが増加する
- 完全に骨折して分離してしまったら、もう自然とはつながらない
- 完全に分離(骨折)する前に、適切な治療を行えばよくなる
上記、が分離症の要素とも言われています。
10代の内は成長期なので、過度な負担をしない事が必要です。
スポーツをしてはいけない。というわけではなく、休息をしっかりと取る。
体への負担を貯めない。
事が重要だと言えます。
若いころは無理をしがちですが、無理をすることで選手生命を短くしてしまうことにつながったり、スポーツどころか日常生活に支障をきたしてしまったりすることもあります。
分離症は、腰椎すべり症の原因となり、すべり症は神経症状や腰痛を引き起こします。
骨が完成する前の10代のスポーツの行い方については十分な監督と注意が必要であると感じます。
是非、注意して頂きたいと思います。
5 まとめ
今回は腰椎すべり症と併発する病状についてご紹介しました。
腰椎すべり症は、先天的な形成不全、腰椎すべり症、変性、外傷など様々な病状が併発した状態で発症します。
腰椎部分には常に大きな力がかかっていて、その力は滑る方向にも働いています。
このような腰椎部分に障害を生じると、腰椎はその大きな負荷に耐え兼ね滑り出してしまうのです。
分離症性のすべり症などは、対策を行うことで予防することも可能です。
早めに症状に気づき、適切な対策を行うようにしましょう。
今回の話があなたの役に立てば幸いです。
本日も最後までありがとうございました。