こんにちわ。
腰痛治療家で理学療法士の平林です。
腰椎すべり症は、激しいスポーツを行っていた人などに比較的多く見られる腰の痛みを中心とした疾患です(腰椎分離すべり症も含む)。
その他、加齢や腰への負担が積み重なると起こることもあります(腰椎変性すべり症も含む)。
腰椎すべり症の場合、腰周辺にだけの痛みで治まる事が多く。
足には痛みやしびれが生じない事が多いです。
状態がヒドイと、坐骨神経痛などといった、足にしびれがの症状を生じることがあります。
この記事にたどりついたという事は、腰椎すべり症の治療を知りたい。
と思っているのではないでしょうか。
そこで、今回は、【腰椎すべり症の治療と効果】というテーマで話していきます。
この記事を読めば、腰椎すべり症の治療について知る事ができます。
そして、あなたの症状の改善につなげる事ができるでしょう。
是非、最後まで読んでほしいです。
では、本日もよろしくお願いいたします。
1 腰椎すべり症は治療できるのか?
腰椎すべり症は、保存療法や手術によって治療ができます。
多くの場合、保存療法での治療が選択される事が多いです。
また、
治療の効果はそれぞれなので、必ず良くなる。
というのはありません。
しかし、
治療をする事で、あなたの症状が良くなる可能性は断然高くなるのは間違いありません。
では、これより具体的に話していきます。
1-1 腰椎すべり症の治療効果はいかほどか?
保存療法の効果は、治療内容によっても違ってきます。
腰椎の状態(すべり具合など)によって、効果は一定していません。
従って、どの治療を行ったら最も効果が高いという治療法はないと考えてよいでしょう。
という中で大切なことは、信頼できる、経験ある医師の診察を受けることです。
そうすれば、
腰椎の状態を的確に判断して、あなたに必要な適切である治療法が選択されるはずです。
これを聞いて、当たり前じゃん。
と思うと思いますが、この部分を意識できていない人がいるのです。
なので、改めてお伝えさせていただきました。
で、腰椎すべり症の保存的治療について、話していきますね。
① 安静
腰痛が激しい場合は、動きが制限されてしまう事が多いです。
このような場合は、無理をせず、数日間(2~3日)安静するのがいいでしょう。
ただし、腰の痛み全体に言えることですが、長すぎる安静期間は、予後を悪くすることがあるため、必要以上に安静期間を取らないことが大切です。
必要以上に安静にしてしまうと、
筋力の低下や可動性の低下など身体機能の低下に繋がる場合もあるからです。
で、この必要以上というのが、人それぞれ期間が違うので、難しいのですが。
腰の痛みがあっても動けるくらいになるまで。
という目安で考えて頂けたらと思います。
② 薬物療法(内服薬など)
痛みや筋肉の緊張(こわばり)に対して、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの薬を用いることがあります。
これらの薬は、痛みや炎症を抑え、必要以上に力の入った筋肉をリラックスさせます。
また、
間欠性跛行(かんけつせいはこう)に対して、血液の流れを良くする薬を使用することもあります。
このような薬を用いることで、血流が改善され、歩行ができるようになる場合もあるのです。
血流が改善されると、歩行時の足の痛みやしびれが減少し、間欠性跛行が改善される。
という目的です。
これは、主に脊柱管狭窄症で使用されている薬です。
腰椎すべり症では、間欠性跛行といった、下肢症状が起きない可能性が大きいでしょう。
③ 装具療法
脊柱(背骨)の動きによって、腰椎のすべりが強くなり、その結果痛みやしびれなどの症状が悪化することがあります。
このような場合、装具(コルセットなどの腰椎装具)を用いて腰椎を固定することで、症状の悪化を防ぐことが可能です。
固定力の高い装具は、医師の処方を受けて、義肢装具士が採型(体の型を取る)して、オーダーメイドのコルセットを制作します(保険適用です)。
体型に合っているため、固定力が高く、その分効果が高くなります。
市販のコルセットでも、比較的固定力の高いものもあるので、まず、市販品で試してみるという方法もいいでしょう。
コルセットは、体の動きを制限するためのものです。
多少の窮屈さや、動きにくさを伴うのが普通です。
緩く装着してしまうと効果が下がるので、体を動かすときにはしっかりと締めることがポイントです。
また、
装着するポイントは個々によって違うのですが、基本的には、ベルトの位置を意識していただくといいでしょう。
参考にしてもらえればと思います。
④ リハビリ
リハビリには広い意味が含まれますが、主に
- 運動療法
- 物理療法
- 生活習慣の改善(動作、姿勢の改善など)
などがあります。
その中で、以下に必要な要素について話していきます。
【筋力強化】
体幹の筋力(腹筋、背筋など)のバランスを整えます。
正常な姿勢を保ち、脊柱をしっかりと支えるためには、体幹の筋力が必要です。
必要以上に筋力を高める必要はありませんが、筋力のバランスを調整する必要があります。
そうすると、姿勢が良くなって、腰椎のすべりも起こりにくくなると共に、進行を予防する事にもなります。
【姿勢の改善】
a:前屈 b:後屈
出典)三宅洋一、大島正史、徳橋泰明 ロコモシリーズ2 腰椎変性すべり症.日本医誌.72(3):123-125(2013)
姿勢によって脊柱(腰椎)の形が変わり、腰椎のすべり具合に違いを生じることがあります。
例えば、
体前屈ですべりが大きくなり、後屈ですべりが小さくなる場合などがあります。
これは前屈位、後屈位でレントゲン撮影をすると分かります。
このような場合、姿勢の調整で症状を改善することができる可能性があります(コルセットの併用が効果的な場合があります)。
【動作の改善】
繰り返される腰椎の動きで、脊髄や神経根部にストレスが生じますので、腰椎に大きな動きが生じないような動作を修得します。
前かがみになることを避け、物を持ち上げる時は、背中を丸めずに伸ばしたまま膝を使って行うなど、症状に応じた動作を行うようにします。
【ブロック療法】
痛みが強い場合は、原因になっている部位に局所麻酔薬などの注射をする方法もあります。
ピンポイントで行うため、痛みを抑える効果は高いです。
しかし、
これも一時的な要素が強く、クセになりやすい、依存しやすくなるので、この理解は必要でしょう。
【その他】
痛みのある腰部を温めたり(温熱療法)、痛みで緊張した筋肉をリラックスさせたり(マッサージなど)することで痛みが楽になることもあります。
また、
姿勢の改善や緊張した筋肉の柔軟性を高めるために、ストレッチを行うことも有効です。
1-2 腰椎すべり症とはなに?
そもそも、腰椎すべり症って何でしょうか?
という事を話していきます。
腰椎すべり症とは、ある椎骨(ついこつ、背骨を構成する骨)が、下側の椎骨に対して前方に滑った状態を言います。
それが腰椎で起こると「腰椎すべり症」と呼ばれます。
椎骨が滑ることで、神経を圧迫するなどして、痛みやしびれの原因となります。
すべり症はその原因によってさらに分類されています。
- 先天的なもの
- 脊椎分離を伴うもの
- 椎間板や椎間関節の変性によるもの
- 外傷によるもの
- 悪性腫瘍など病的なもの
これらの内、脊椎分離を伴うものや変性によるものが比較的多く見られます。
タイプによって特徴がありますので、ご紹介しておきます。
・L5(第5腰椎)に多い
・馬尾障害は生じにくい
・神経根性の間欠性跛行を生じることがある
・スポーツなどによる脊椎分離症が原因になることがある
・L4に多い
・馬尾障害を起こすことが多い
・馬尾性の間欠性跛行を起こしやすい
・40歳以上の女性に多い
【間欠性跛行】:しばらく歩くと下肢に痛みやしびれが生じて歩けなくなるが、休憩するとまたしばらく歩けるようになる状態
2 腰椎すべり症は、手術した方がいいのか?
気になる手術の必要性についてお伝えします。
手術が必要かどうかについては、判断が難しい場合がありますので、専門医に相談の上決断されることをおすすめします。
2-1 手術はしなくてよい場合が多い
とは言っても、手術をする必要がない。
という方も沢山います。
むしろ、手術をしない方が予後が良い。
というデータもあるのが実際です。
しかし、
脊椎手術を行っている病院での手術件数を見てみると、ほぼ腰椎椎間板ヘルニアの手術件数と同程度の様です。
という事は、
腰椎すべり症は、一般的には腰椎椎間板ヘルニアよりも発症率が低いと考えると、手術率は椎間板ヘルニアよりも高いと言えるでしょう。
椎間板ヘルニアでは自然と治癒する例も少なからずありますが、すべり症は物理的に骨がすべってしまっているため自然治癒に頼れない。
という点で、手術率が高くなっていると考えられます。
しかし、
椎間板ヘルニアよりも手術率が高いというだけで、そもそも椎間板ヘルニアの手術率は10~20%程度なので、すべり症の手術率がそれほど高いわけではありません。
したがって、
基本的には保存療法が中心となります。
しかし、
重度の症状が生じた場合や症状が進行する場合においては手術の検討が必要となるのです。
2-2 手術をする場合はどんなときか?
下肢に麻痺症状(筋力の低下、重度の感覚障害など)や膀胱直腸障害を生じてきた場合では手術が必要なことがあります。
神経は強い圧迫などを長時間受けると、ダメージが不可逆的となり、麻痺などの後遺症が残ってしまうことがあります。
したがって、
症状が重篤の場合は、緊急に手術を行う必要があります。
また、
排尿・排泄の機能が低下している。コントロールが効かない。
といった場合に手術を考える方がいいです。
症状が悪化しているときは医師へ伝え、手術の検討をしなければなりません。
3 腰椎すべり症も治療できる可能性は高い
治療の効果の項でお伝えしたように、腰椎すべり症には様々な保存療法があります。
なので、
自分に合った治療法を組み合わせて行うことで、治療できる可能性があります(症状を悪化させないことも、治療効果とみなすことができます)。
大切なことは、経験があり信頼できる医師の診察・治療を受けることと、自分自身が治していくための努力を継続して行うことです。
医師と患者が連携して努力していくことで、治療の効果を上げることができます。
で、経験がある医師かどうかがわからない。
という疑問を感じるでしょう。
その場合は、もう、医師を信じるしかありません。
担当の医師を信じましょう。
それでも信じる事ができない場合は、セカンドオピニオンなどで、他の診察を受けましょう。
4 まとめ
今回は腰椎すべり症の治療・効果についてご紹介しました。
腰椎すべり症は、腰椎の1つが前方にすべることによって起こります。
腰椎がすべる原因には、腰椎の分離や変性などいくつかありますが、腰痛や神経の症状を引き起こすといった特徴があります。
保存療法と手術療法がありますが、多くの方が保存療法での治療が多いでしょう。
保存療法の効果が無い場合や麻痺・膀胱直腸障害などの症状を生じた場合においては、手術療法が検討されることもあります。
で、
さらに治療を成功させるためには、信頼できる医師による診察・治療と自分自身の継続した努力が必要となります。
治療を諦めなければ、症状を治すことはできるでしょう。
諦めないで欲しいと願います。
本日も最後までありがとうございました。